大判例

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最高裁判所第一小法廷 平成3年(行ツ)81号 判決

岡山県井原市井原町二三〇七番地の五

上告人

高杉保

右訴訟代理人弁護士

中島純一

東京都板橋区志村三丁目二六番四号

被上告人

文化シャッター株式会社

右代表者代表取締役

岩部金吾

右訴訟代理人弁護士

及川昭二

右当事者間の東京高等裁判所昭和六三年(行ケ)第二四三号審決取消請求事件について、同裁判所が平成三年一月二九日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立てがあった。よって、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人中島純一及び上告人の各上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、違憲をいう点を含め、ひっきょう、原審の専権に属する証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 小野幹雄 裁判官 大堀誠一 裁判官 橋元四郎平 裁判官 味村治)

(平成三年(行ツ)第八一号 上告人 高杉保)

上告代理人中島純一の上告理由

第一 原判決には、判決に及ぼすべき左記重要事項につき事実摘示の欠缺があり、その判断も欠落し、審理不尽、理由不備の違法があるので破棄を免れない。

{大判昭二年(オ)第七七九号 昭和二年十二月一〇日判決新聞二八〇二号 添付別紙参照}

一 原審は、上告人がその第三回準備書面において上告人の本件実用新案の実施(シャッターの組立)にやつとこ(甲第四七号証)の使用は不必要なものであるとし、被上告人会社の社員原田豊の「組立には(やつとこ)はいらんです」との証言[乙第十三号証{別訴大阪地方裁判所昭和六一年(ワ)第六〇六二号事件の平成元年九月二五日証言の証言調書}十枚目)]を引用しているにもかかわらず、上告人の上記主張に対する何等の事実の摘示がない。

上告人の本件実用新案の明細書には、シャッターを構成する部材のスラットの結合には「捲込縁を挿通するだけでスラットの組立ができる」ことが記載されており、「やつとこ」等の治具(道具)を使用することは一言半句も記載していない。

原審が前記上告人の主張を事実摘示の中に記載し、これに対する判断を誤らなければ判決は正に反対の結論になっていた筈である。

(なお「やつとこ」の使用についての原判決の自然科学理論、原則に反する点については後述する。)

なお、本件実用新案の実施に不必要なものを被上告人が(イ)号物件の作成に必要だったと主張すること自体、社簡易裁判所の証拠保全事件の検証物、シャッターが設置当時の昭和四九年八月頃のもの(非(イ)号物件)でなく、被上告人が後で(イ)号物件に作成し直したことを示すものである。

二 上告人は原審第三回原告準備書面で、前記別訴において初め被告(被上告人)が被告第三回準備書面(本件甲第十八号証)で昭和四七年八月頃から本件実用新案と同一構成のシャッターを大々的に製造販売していると主張し、その後の被告第六回準備書面(本件甲第五〇号証)では、昭和四八年当時被告会社姫路営業所では昭和四九年十一月の販売量は一一、七七六平方米であったと主張し、その証拠(本件訴訟乙第六号証)を提出していながら、後の昭和六三年十二月六日の被告準備書面では被告(被上告人)の姫路営業所では昭和四九年十一月当時、月間三〇〇平方米(日量約一〇平方米)と主張(別件甲第十九号証)を一転し(てきていることを)述べているが、右について、原審では一言半句の事実の摘示がない。

右は被上告人の先使用事実のないこと、被上告人の提出した証拠に信頼性のないことを如実に明らかにするものである。

三 上告人は原審原告平成二年六月二十二日付証拠説明書で、被上告人は別訴で訴外晃洋精機株式会社から(イ)号物件製造用として昭和四七年五月頃スラット製造用装置を買い受け(先に訴外の同業者の最大手の三和シャッターが買った後)、(イ)号物件を製造するようになったと主張した事実及び、上告人が晃洋精機株式会社から買い受けたシャッター製造用装置は、本件実用新案の実施品の製造用装置ではなく、スラットの両端部を一部切りおとす方式のもの(甲第六二号証)で、本件実用新案のようにスラットの両端に対向状に「きりおこし」を作るものではない。

従って、被上告人はこの晃洋精機株式会社の装置では(イ)号物件は作れないとし、被上告人の先使用の事実のないことを主張(立証)した。

然し、原審は右の事実の摘示をしていない。

四 上告人は原審第一回乃至第二回準備書面において、被上告人が昭和四四年頃から昭和四八年七月にかけて、シャッターに関係する

〈1〉特許願特願昭四八-八九九七三号(甲第二八号証)

〈2〉実用新案登録願実願昭四五-三九七八三号(甲第二九号証)

〈3〉〃実願昭四四-四五八八六号(甲第三〇号証)

〈4〉〃実願昭四五-一六八一二号(甲第三十一号証)等の種々の出願をしているが、シャッターの製作の容易性、組立の容易性、経済性に優れた本件(イ)号物件について、原告より先に製造したとしながらも、何等の出願手続をしていない、これは先使用の事実のないことを証明するものである

と主張したが、原審判決には右に関する事実摘示がない。

第二 原判決には、左記の判決に影響を及ぼすこと明らかな自然科学上の原理・原則に反する事実を認定した法令違背理由齟齬の違法がある。

[昭和四二年(行ツ)第三八号、第三九号]

一 原審が証拠資料とした「社簡易裁判所昭和五七年(サ)第一二〇号証拠保全申立事件の検証対象物件たるシャッターの本体は、昭和四九年八月二七日取付けられたものである」とは原審の事実の認定である。然し、

(イ)被上告人は右社簡易裁判所の検証物も被上告人が提出した検乙第一号証(岡田邸のスラット)も同じ物(検乙第一号証は、社簡易裁判所の検証物を切断したものではないが)だと(被上告人の主張どおり)認めている。

(ロ)検乙第一号証のスラットの一ピッチは、

五九、一ミリ

被上告人がスラットの統一品を作るため、出図日付は昭和四八年六月二〇日のシャッターの製造図面(乙第七号証、乙第十四号証の四等)のシャッタースラットの一ピッチの記載数字による長さは、

五五、五ミリ

である。

その間には三、六ミリの差がある。

(ハ)被上告人は、前記社簡易裁判所の証拠保全申立手続において、訴外社高等学校長作成の(一ピッチ)五五、一ミリの証明書(甲第四二号証)を疎明資料として提出している。

右社高等学校長の証明書は客観的事実に反する証明書であり、公正証書原本不実記載罪の犯罪の結果の書面であって、到底最高裁判所で是認できない、事実認定証拠として認容不許の書面であり、このような違法採取の資料に基づき、同じくスラットの一ピッチ五五、五ミリとし、検証シャッターが昭和四九年八月二七日設置されたもののままとした社簡易裁判所の証拠保全の結果を援用している原審判決も違法であって破棄を免れない。

二 原判決では、

(イ)乙第一号証、乙第十四号証の四等の図面は、スラット製造時の標準寸法を示したものであって、数字的に表示してある一ピッチ五五、五ミリに対し製品は数ミリの誤差を生ずることがあるとし、

(ロ)永年の使用によってピッチの長さが製造時のものより伸びることもあるとし、

検乙第一号証の一ピッチが、五九、一ミリあっても、検乙第一号証は前記乙第七号証・乙第十四号証の四等の図面に基づいて作成されたものであり、被上告人はこれらの図面に基づいて先実施したものであると認定している。また、スラットは使用中数ミリ伸長するとしている。

(a)然し、乙第七号証は製造図面或いは統一図面であって、これに基づいて被上告人の全国に散在する営業所の製品を統一寸法で製造するよう指示したと被上告人が主張している基本図面である。被上告人は、前記別訴の昭和六三年四月二六日準備書面(本訴甲第六三号証)で製造図面と述べている。

従って、この製造図面に反する製品(シャッタースラット)を作成することを野放しにしているものではない・数字的単位も0以下のミリ表示の小数単位である〇、五ミリを右乙号証で表示しており、製造図面(統一図面)に基づく製品精度も、右のように厳格に規制しているのである。

原審が乙第七号証・乙第十四号証の四等の寸法(特に)一ピッチ五五、五ミリの数字は標準寸法を示したものに過ぎずとし、一ピッチ五五、五ミリの寸法表示から一ピッチ五九、一ミリの寸法の製品となってもそこには不合理性はないとしたのは、事実誤認、社会通念に反する違法な事実の認定といわなければならない。

(b)本件(イ)号物件のようなシャッターのスラット[厚さ〇、五ミリの鋼板(甲第二〇号証作成年月日は争うも)]の鈑金加工製品においては、一三〇ミリの長さのものにおかても〇、三ミリの製品誤差しかない(甲第六一号証)。従って、五五、五ミリのものにおける製品誤差は〇、一三ミリにしか過ぎない(五五、五ミリ+-〇、一三ミリ)、(製品スラットの一ピッチ五九、一ミリのものは金型の大きさで五九、一ミリ+一〇、一三ミリのものが必要)

従って、一ピッチ五五、五ミリ作成用の金型では、五九、一ミリの製品はできず、一ピッチ五九、一ミリの製品作成用の切断器の金型には一ピッチ五五、五ミリの中間製品は通らない。

何れにしてもスラットの一ピッチ五五、五ミリのスラット製造装置では、一ピッチ五九、一ミリの製品を作ることはできず、又、一ピッチ五九、一ミリのスラット製造用装置では五五、五ミリの製品はできない。

(c)原審では、シャッターの使用中の「伸ビ」を取り上げているが、弾性体の「伸ビ」はその比例弾性限度内の負荷が加わっても負荷が零となれば原形に復し「伸ビ」る(永久歪が生ずる)ことはない。[(乙第十六号証の三)実例ゼンマイ時計]

社簡易裁判所におけるスラット一ピッチの長さは六〇ミリ前後(昭和五七年頃で)、検乙第一号証(平成二年)は五九、一ミリ、これによりこれを見ればシャッタースラットに掛る負荷は、シャッタースラットの比例弾性限であることが明らかである。

従って、スラットに一般的、具体的、実際的な荷重が加わっても、それは、比例弾性限でしかなく、スラットが伸長することはない。

三 原判決では、スラットの差し込みに「やっとこ」の使用必要だとしている。

(別件大阪地方裁判所の事件では、検乙第一号証と同一の板金を使用したスラットを「やっとこ」の使用なくして結合ができる実験をしている。)

スラットは明細書のとおり「やっとこ」を使用せず結合ができ、これが本件実用新案の技術的ポイントの一つである.板金のうち、厚手のものの場合は、スラットの差し込み方向から力を加えれば、切り起しを滑って結合する。スラットに差し込み方向から力を加えることは極めて容易で、切り起しを把持するに困難な「やっとこ」を使用する愚をする者はいない。

原審が肉厚なスラット(厚さ〇、五ミリにしか過ぎない)の切り起しを押えるのに「やっとこ」が必要だとしたのは、自然科学の原理・原則、一般的技術常識にも反した違法なものである。また一方の挾持部が突起状の乙第五七号証の「やつとこ」では右の突起が切り起し部分にはまり込み抜けなくなるおそれさえあり、イ号物件には「やっとこ」を使用することはない。

四 原判決は、吊元スラットの結合について、切り起しによるときは左右にずれ易いとしている。

しかし、本件実用新案を実施した吊元スラットでは左右の切り起し間に挾み込まれているので、それだけで左右にずれない。その上、シャッター本体が支柱内のガイド溝にはまり込んでいるので、一層左右にずれることはない。

これも亦原判決の自然科学の原理・原則、一般的技術常識に反する違法なものであり、これによって、被上告人が吊元に端金具(非(イ)号物件)を使用したことの正当な理由とすることはできない。

上告人は、非上告人が吊元スラットに端金具を使用したのは、先述した社簡易裁判所の検証対象中のシャッター本体部分は(イ)号物件に組み換えたが、ケース中の吊元については組み換えを行なわなかった証拠であり、被上告人に先使用事実のないことを主張(立証)してきている.

以上の理由があるので上告人は原判決を破棄し、更に相当の裁判を求めるものである.

以上

(添付書類省略)

(平成三年(行ツ)第八一号 上告人 高杉保)

上告人の上告理由

第一点 東京高等裁判所は憲法第三二条に違背している。

第二点 判決は判断を違脱している。

第三点 判決への影響の明らかな常識的経験則の違背があった。

第一点

一 平成元年三月十六日東京高等裁判所で行われた第二回準備手続きで上告人は次のことを口頭で陳述した。

社高等学校の証拠保全記録(甲第三号証の二)の写真(14)の拡大写真(甲第四号証)を示して、このケース内の短スラツトの一枚には、長さ方向の中央部にシャツターを取り替えるときでないとできないきずが、くぼみとして表れている。これは長尺スラツトを取り替えるために、シヤツターを下に引張り出したときに、もどらないように留めるために、てこを当てたきずであることを陳述した。

二 同じく証拠保全記録(甲第三号証の二)の写真(3)と(4)のラベルの部分を拡大した写真(これは私の代理人が大阪地方裁判所にあるネガフイルムからラベルの部分を拡大した(3)と(4)の両方の写真)を示して、両方のラベルは同じ内容を表していても印の形が違う。なかでも製造番号の7の印の縦の長い棒の部分は一方は三日月形である。もう一方(甲第十二号証)は下部が少し曲りがあるほかは直線状である。

甲第一四号証(シヤツター上部のブラケツト内側のラベルの写真)を示してこの写真は、代理人と私が確認をして写したもので製造番号の7の右に同じ部分は直線状である。

これら三枚の写真に表れている印の形は、それぞれが違うために同じ印ではないことを陳述した。(甲第十五号証は二枚のラベルの証拠説明書)

ラベルに押した製造番号は、月はじめからはじまるので同じ番号が沢山ある。よその同じ番号のラベルをはがして来て、出願後に製作したシャッターへ貼り、それを社高校へ持って来て取り替えたものであることを陳述した。

以上のことを第二回準備手続きで私が口頭で陳述した。

三 平成元年五月十八日 高裁第三回準備手続きで私は裁判官殿に対して、申し上げたいことがごさいます。と陳述しました。

裁判官殿は、本人尋問のときに聞きますから、とおっしゃったので、本人尋問で次のことを陳述した。

平成二年六月二十二日 第一回本人調書の速記録で(十三枚目)甲第二五・二六号証(軽量シヤツター統一図面の水切組立図)を示して、これらの図面に示されているシヤツターは甲第二九号証または甲第三一号証などの、爪なしシヤツターである。そして納り面は、それらとも構造が違うことを陳述した。

統一図面の説明

甲第一七号証、昭和六十三年六月十四日 原田豊氏の証人調書の速記録十五枚目に日付の説明があな。

甲第三五号証、平成元年七月十七日 原田 豊氏の証人調書の速記録二十枚目に乙第一四号証の二を示すとあるのは軽量シヤツター統一図面の原本を綴ったフアイルである。乙第一四号証の一は、爪なしスラットの詳細図である。ここに統一図面の意味が説明されている。

四 乙第五号証(爪なしスラツトの生産に関する打合わせ書面綴り、この原本は大阪地方裁判所で領置中に紛失した。詳しい説明は甲第一七号証、昭和六十三年六月十四日 原田 豊氏の証人調書の速記録三枚目及び十九枚目にある。大阪地裁では乙第五号証のことを乙第一二号証と読んでいた。)の爪なしスラツトによる変更事項のページの水切りの欄を示して、寸法はスラツトに同じでは社高校の証拠保全記録(甲第三号証の二)を示して写真(10)のものはできない。

写真の水切の長さはスラツトの長さより短いことを陳述した。

五 平成二年七月二十四日 第二回本人調書の速記録で(四枚目)乙第一四号証一を示す(法廷では書証目録にある写真ではない。軽量シヤツター統一図面の原本を綴ったフアイルであった。)

この表紙はいたんだのではなく、暴露試験機で暴露しただけの感じで、中の図面はすり切れたように古ぼけていることを陳述した。

(表紙をもって中を開くのが当然であるから表紙がいたまないはずはない。)

六 同じく第二回本人調書の速記録(七枚目)

軽量シヤツター統一図面綴りフアイルの中には吊元の部品図がない。ですからシヤツターが作れないことを陳述した。

以上の陳述で被上告人が提出した証拠では社高校の証拠保全された爪なしシヤツターは作れない。そして証拠保全記録の吊元の写真(14)及びラベルの拡大写真(甲第一二号証、甲第一四号証)からシヤツターの長尺スラツトは取り替えられたことが明らかである。

裁判官殿は平成元年五月十八日第三回準備手続きで本人の言いたいことは、本人尋問のときに聞きます。とおっしやったのですから、本人尋問で私が証拠を示して真剣に陳述したのですから、聴いて審理しなければ信義誠実に違背する。

判決の理由には以上のことは何も示されていない。これは当事者本人を無視しているのであって、東京高等裁判所は当事者本人の裁判を受ける権利を奪ったのと同じ状態であるから憲法第三十二条に違背する。

第二点

七 甲第一六号証(松本義明氏の証人調書)の速記録で尋問されたときは、文化シヤツター大阪支店の支店長であった。

昭和四十九年 文化シヤツター姫路営業所の所長をしていた証人が、乙第四号証(シヤツター仕様番号控)を書いた。

それに記録されている社高校の証拠保全されたシヤツターは、イ号物件の爪なしシヤツターであったかどうかわからないと証言した。(二十九枚目)(証言のときの乙第一四号証の一は東京高裁では乙第七号証である)

八 甲第一七号証(昭和六十三年六月十四日 原田 豊氏の証人調書)の速記録で尋問されたときは、文化シヤツターの製造管理部技術課長であった。

昭和四十九年文化シヤツター姫路工場で生産管理係をしていた。

社高校の証拠保全されたシヤツターを設置したときは、なにも関与しておらず一切知らないと証言した。(二十一枚目)

九 平成二年三月二十三日 苦木幸雄氏の証人調書の速記録で尋問されたときは療養中であった。

昭和四十七年から証人は文化シヤツターの取り付けを目的とする苦木商店なる商号で商売をやっていた。

社高校の証拠保全記録の写真を示して(速記録二枚目)

昭和四十九年八月頃そこへ付けた。

それは、写真の番号でいえば(2)である。ほかによくわかる写真は(9)ですと証言した。

証人は、文化シヤツターのマークとマークの位置からシヤツターを見て証言をしている。この二枚の写真ではどのような爪なしシヤツターであるのかわからない。

工事をしたことは、車を運動場へ入れたことなどを思い出して、間違いなと証言しているのである。(三枚目)

(四枚目)同じ爪なしシヤツターを社高校へ付ける前に二箇所倍全部で二十五枚位付けた。それは四ケ月か五ケ月の間であったことを証言した。

(五枚目)四十九年七月か八月に社高校と同じ爪なしを初めてやり出した。それまでば、端金具という爪が付いていたもの一種類です。と証言した。

(二十一枚目)証人は、甲第二九号証・三一号証などの爪なしシヤツターをやっとこを使用して工事をしたことがあると証言した。

以上の証言から、昭和四十九年八月に付けた社高校のシヤツターは初めての爪なしシヤツターであり、四ケ月か五ケ月の間だけ 取り付け工事をした爪なしシヤツターであることから、使用され続けているイ号物件の爪なしシヤツターでないことは明らかである。

以上のとおりであるから、争点の判決理由は当初のものと取り替えられたものであることを窺わせる証拠はない。というのは判断を遺脱した判決である。

第三点

十 判決理由(二十五枚目)「シヤツターが前掲甲第二二号証(内容は乙第一四号証の三と同じ。)の図面に基づいて(前掲乙第七号証の五五、五ミリ表示は使用される場合の標準的寸法と認められることは前記認定説示のとおり)製作された」との裁判所の認定である。

甲第二二号証の図名はスラツト、ピツチ寸法は五七、一ミリである。乙第七号証の図名は爪なしスラツト詳細、ピツチ寸法は五五、五ミリである。(イ号爪なしシヤツターの構造を示す図面)

図面の作成は、日本工業規格の製図通則の規格で作成される。規定は、寸法の重要度の少ない寸法は記入しないかまたはかっこを付けて記入することになっている。

乙第七号証のピツチ寸法五五、五にはかっこはない。したがって重要寸法である。

乙第一三号証(平成元年九月二十五日 原田 豊氏の証人調書)の速記録の十一枚目に証人は五五、五という基準のピツチ寸法とよんでいる。

文化シヤツター株式会社では五五、五ミリは基準寸法であることを示す。

必要があってピツチ寸法は三桁の表示になっている。

甲第二二号証と乙第七号証は寸法が二桁も違う性質の違う図面であり、別のものを表している。

これを裁判所は標準的寸法と認めて、図面の寸法や製図通則の規定を無視するような違法な認定をした。

このような認定が許されると、日本工業規格の意味がなくなる。

この認定がなかったら、イ号物件のシヤツターは被上告人が提出した証拠の図面から作ることはできない。

このように専門的にみなくても、金属製品では寸法が少し違うだけで、値段が違ったり強さが違ったりするのをふだん経験する。

したがって寸法を無視するような認定があったから、常識的経験則の違背があった。

以上

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